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ボツリヌス治療

ボツリヌス治療について

ボツリヌス治療について

増加する食いしばりによる歯のトラブル

近年、予防意識の向上により虫歯や歯周病は減少傾向にあります。しかし一方で、食いしばりが原因となる歯のトラブルが増加しています。

食いしばりによって引き起こされる主なトラブルには、知覚過敏、顎関節症、そして歯の破折(被せ物や歯の根っこまで割れてしまうケース)があります。特に歯の破折による歯の喪失が増えており、これは現代人のストレスや生活習慣の変化が大きく関係していると考えられます。

意外と大きい噛む力

食事の時は20〜30kgしかない噛む力も、寝ている時の食いしばりになると60〜100kgにも達します。

これは体重分の重さが1本の歯にかかっているのと同じです。しかも睡眠中は意識がないので、この凄まじい力が何時間も続きます。

この破壊的な力が、被せ物の破損や歯の根っこの破折を引き起こし、最終的に歯を失う原因となってしまうのです。食いしばりは歯にとって「見えない破壊兵器」といえます。

意外と大きい噛む力

ボツリヌス治療という解決法

ボツリヌス治療という解決法

このような食いしばりの問題を根本的に解決する手段の一つとして、ボツリヌス治療(以下、ボトックス治療と呼びます)があります。ボトックス治療の最大の特徴はすぐに効果が現れ、早期改善を見込めることです。

なぜボトックスは食いしばりに
効果があるのか?

食いしばりが起こる原因について

まず、食いしばりがなぜ起こるのかを説明します。私たちがものを噛む時、脳から「噛め」という信号が神経を通って「咬筋(こうきん)」という、噛むときに使う筋肉に伝わります。

通常は必要な時だけこの信号が送られますが、ストレスや長年の癖が原因で、寝ている時など無意識のうちに、過度に強い信号が送られ続けることがあります。これが食いしばりの正体です。

食いしばりが起こる原因について
神経から筋肉に送られる伝達物質について

神経から筋肉への信号伝達には「アセチルコリン」という神経伝達物質が使われます。神経の末端からアセチルコリンが放出されると、筋肉がそれを受け取って収縮します(噛む動作が行われます)。

ボトックスに含まれる「ボツリヌストキシン」が筋肉を緩ませる

ボツリヌストキシンとは、ボツリヌス菌が作り出すタンパク質の一種で、これを筋肉に注入する治療がボトックス治療です。

ボツリヌストキシンは、この神経伝達を一時的にブロックする働きがあります。具体的には、神経末端からのアセチルコリンの放出を抑制することで、筋肉への「収縮せよ」という信号を弱めます。結果として、筋肉の働きを抑制し、噛む力が弱まるのです。

これは例えるなら、水道の蛇口を少し締めるようなイメージです。元々は水道から水が全開で流れている(かなり強い力で食いしばっている状態)だったのを、完全に止めるのではなく、人の手によって少し蛇口を締める(ボトックスを打つ)ことで、流量を適切に調整する(筋肉を弛緩させ、食いしばる力を緩める)ようなものです。

これにより、必要最小限の筋肉の動きは保ちながら、過度な筋肉の収縮だけを抑制することが可能です。

ボトックスが食いしばりを改善する流れをまとめると

下記の1〜4の流れを経て、食いしばりを改善することができます。

  1. 過度な筋収縮の抑制無意識の強い食いしばりが軽減されます
  2. 筋肉の緊張緩和常に緊張(収縮)していた咬筋がリラックスします
  3. 痛みの軽減筋肉の緊張が和らぐことで、顎や歯の痛みが改善します
  4. 歯への負担軽減過度な咬合力が軽減され、歯の破折リスクが下がります

ボトックスの安全性について

ボトックスの安全性について

ボツリヌストキシンが安全な理由は、その作用が「可逆的」だからです。可逆的とは、ある状態から別の状態に変化した後、元の状態に戻ることができる性質のことで、ボトックスを打ってもいずれ効果は無くなって元の状態に戻ってしまいます。

※一般的に、治療後約3〜7日で効果が現れ始め、2週間程度で最大効果に達します。効果は約4ヶ月でなくなります。

ただ、ボトックスの効果により、食いしばりが原因で過度に発達した咬筋が徐々に小さくなっていきますので、ボトックスを打ち続けることで、次第に適切な筋肉量・サイズに落ち着いていきます。

このように、ボトックス治療は単に症状を抑えるだけでなく、食いしばりの根本的な改善につながる科学的に裏付けられた治療法ですので、ご安心ください。

実は知られていない
「ボトックス」の真実

ボトックスといえば、まるで治療名かのような意味合いで現在は認識されていますが、実はボトックスは1989年にアメリカのアラガン社が開発した世界初のボツリヌストキシン製剤のことで、元々は商品名なのです。

世界初の商品ということもあり、ボツリヌス治療(ボツリヌストキシン治療)全般が、いつの間にか「ボトックス治療」と呼ばれるようになりました。すでに市民権を得ている名称ですので、当院でもボトックス治療と呼んでいます。

しかし現在では、世界中で様々なメーカーが同様の薬剤を製造しており、今ではほとんどアラガン社のボトックスより、効果の高い後発品(ジェネリック)の方を用いている病院が多いです。

国際的に有名なボツリヌストキシン製剤

現在、世界で承認されているボツリヌストキシン製剤には以下のようなものがあります。

  • ボトックス(アメリカ・アラガン社)
  • ディスポート(イギリス・イプセン社)
  • ゼオミン(ドイツ・メルツ社)
  • NABOTA(韓国・ダエウォン社)

なぜボトックスより、後発品(ジェネリック)の方が効果が高いのか

当院では、NABOTAという韓国製の薬剤を使用しており、こちらも後発品(ジェネリック)です。ジェネリック医薬品は、先発品の改良版として開発されることが多く、より精製度が高く、不純物が少ないという特徴があります。

NABOTAの場合、製造技術の進歩により、より純度の高いボツリヌストキシンA型を抽出することが可能になり、同じ単位数でも、より確実で持続的な効果を期待できるのです。

その高い効能から、NABOTAは歯科の分野だけではなく、医科の分野でも用いられることが多い薬剤です。当院がNABOTAを選択している理由は、その高い効果と安全性、そして韓国FDA承認という信頼性にあります。